■新しい資本主義第一回
【参考文献】
①田坂広志(2005)『使える弁証法』
簡単な本なので全部読んでみてください。
②ポール・ホーケンら(2001)『自然資本の経済』第1,2章 25-53p.
ー問題ー
■導入
『使える弁証法』を読んで、「螺旋的発展」だと思うものを、
ひとつ挙げて、みんなに説明してください。
螺旋的発展だと思うもの
●「つけ」と「クレジットカード、ローン」
江戸時代の後期まで、何か買ったり、食べたりした代金を「つけておく」 ことが主流だったが、
越後屋呉服店が「現金かけねなし」とうたい、その場での現金販売で安値で売ることをはじめた。
これが大盛況で、その後はその場での現金取引が主流になり、
「つけ」で代金を支払う機会は少なくなった。
そもそも「つけ」とは、今手元にないお金(未来のお金)を信用を担保にして
今使うことが出来るというサービスだと思う。
しかし、その場での現金取引の場合、今手元にお金がないと
商品を購入したり、サービスを利用することは出来ない。
そのため、現金取引になることで「未来のお金を信用を担保に利用する」ことは
出来なくなってしまった。
しかし、技術が進歩し、コンピューターで管理が出来る時代になって、
「クレジットカード」や「ローン」といったサービスが出現した。
これは、カード会社に信用してもらい、今自分が持っていない未来のお金で
今商品を購入したり、サービスを利用したり出来るので、江戸時代までの「つけ」が復活したと言えると思う。
しかし、江戸時代の場合はほとんどの場合、年末に一括払いであったはずだが、
技術の進歩によって、自分の収入や現在の生活状況などに合わせて、
金額や返済期間を設定することが出来るようになった。
ここが文献でいうただの「懐かしいもの」 でなく、「便利になった懐かしいもの」
にあたると思い、螺旋的発展であると思う。
■【 其の壱 】
ハーバードMBAのSEコース在籍の友人スティーブがいの研に遊びに来ました。
「Hey baby, 日本は欧米のマネばかり!Originalなアイディーアはないのかい?」
スティーブにも分かるように、かつ、今まで学んだ授業のエッセンスを使って
担当事例を説明して、ぎゃふんと言わせてやってください。
その際に①~③を必ず盛り込んでください。
★今期の授業テーマ(オリエン含む)
イノベーション、ソーシャル meets ビジネス、
スケールアウト、ソーシャルキャピタルマーケット、
マイクロファイナンス、ベンチャーフィランソロピー
ミッションマネジメント、デザイン
①キャッチコピー:『先見の明―重源』
②事例内容:治承4年、南都焼き討ちによって東大寺が燃えてしまう。そこで、東大寺再建の話しが持ち上がるが、法然が抜けたこともあり、当事無名だった重源が61歳で造東大寺大勧進に抜擢される。それまで、国家レベルでの寺社創造・再建プロジェクトには、「成功」「造国」でという制度が取られていたが、東大寺再建には、そのどちらでもなく「知識結」という方法が取られた。これはNPOを募るような方法である。各所に「知識」(仏の功徳を得るために私物を提供する人々)を結び、これをネットワークする「勧進聖」を募ってこれを組み立てながらプロジェクトを進めるという方法である。重源はそのリーダーである大勧進となり、事業計画の全てを任され、立案・予算の執行権がある代わり、無報酬で行った。
プロジェクトは一輪車を6台作るところからはじまり、6つの街道を重源自ら行脚することからスタートした。また、全国行脚で民衆の協力を呼びかける一方で、後白河法皇や源頼朝などから大口の寄付も募っている。こうして5年後の1185年に大仏の開眼供養を行い、1195年にやっと大仏殿をはじめ塔堂伽藍が全て整ったのである。
参考URL:松岡正剛 「千夜千冊」 2000年6月5日版 ―伊藤ていじ『重源』http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0063.html
③どこがおもしろい(exciting! interesting! wonderful! cool! sexy! etc.)のか
私は、この重源のプロジェクトで面白い!exciting!と思った点が3点あります。
■1 「知識」ネットワークの活用―衆知創発!!
この時代は、東大寺のような大きなプロジェクトを行うには、国家レベルで指揮して事業を行うのかと思っていたが、インターネットもない時代に各地にいる『知識』をネットワーク化して、そこから得られる情報を組み立てて事業を進めて行ったところが、とても面白いと思います。ちょうど、平安末期から鎌倉時代にかけての激動の時代だったから、法皇の権力も大きくなく、平家も没落しかかっていて、でもまだ源氏が政権を確立できている訳ではないという、誰かに権力が集中していない時期であったから、このような方法を取ることが出来、それが最善の方法であったのではないかと思います。
今のようにインターネットも電話もない時代に、ネットワークを活用して事業を進めるのはとても大変なことだと思いますが、それなのにいろいろなところから知恵や技術を結集して事業を進められるだけの速度で、情報や人が動いていたことにも驚きです。
■2 東大寺再建プロモーション―ミッションマネジメントとデザイン
東大寺の再建には、周防国の税収が当てられることになっていましたが、それ以外に、重源は勧進活動を行うことで、寄付を募り、また、勧進聖、勧進僧、土木建築、美術に関わる職人を自ら集め組織していました。これは、明確なミッションがないと人を集めることが出来ないと思います。そこで、重源ははじめに一輪車を6台造り、その左右に東大寺再建詔書と勧進疎、釈迦三尊の図像を張りめぐらして都から6方向に延びる街道を全国行脚に出ました。これはただ行脚に出るのではなく、自分たちがどういう目的で行脚しているのか、人目で見て分かるようにしておき、また「南無阿弥陀仏」を名のって、このプロジェクトに関わること自体が仏法の体得に繋がることを暗示して人々の共感を得て、協力・浄財寄付を募っていったというところがまさにデザインの視点だと思います。
後白河法皇や九条兼実、源頼朝といった権力者からも重源自らが出向いて浄財寄付を請いに行き、成功しているところをみると、ミッションやビジョン、メリットなどきっと庶民に伝えるのとはまた別の伝え方をしていたのではないかと思い、ミッションマネジメントのもとにデザインされたプロジェクトだっただろうと思います!!
■3 別所を造る―スケールアウト?!
東大寺は奈良ですが、奈良以外に、伊賀・紀伊・周防・備中・播磨・摂津など近辺に別所を造り、造営事業の拠点にするととも に、信仰の拠点にもしていました。当時、政治・宗教などの全ての拠点は京都・奈良で、かつまだ仏教は平安時代には貴族の親しむ宗教でした。そういう状況の中、仏教の信仰の拠点も同時に各地に造ることで、各地の民衆にも仏教の思想を広めていき、その後鎌倉時代に仏教が栄え、民衆にも広く親しまれる宗教となった土台を築いていったのではないかと思います。重源によって、東大寺再建という名義のもと、同時に仏教思想がスケールアウトする第一歩を築いていき、そしてそれをもし重源が意図していたとしたら、とても驚くべきことだと思います。
【 其の弐 】
某自動車整備会社の中村社長(58)がいの研に遊びに来ました。
「ネイチャーキャピタリズム?それは新しい育毛剤かい?」
自然資本主義の4つの戦略(『自然資本の経済』P38,39)をそれぞれ、
自分の好きな事例を用いて、そんな中村社長が納得するように
説明してください。事例はひとつでも複数でも構いません。
■自然資本主義の4つの戦略とは何か、社長にご説明します♪
①資源生産性の根本的改善
資源生産性の向上とは、簡単に言うと、原材料やエネルギーの使用量を少なくしたにもかかわらず、製品やその工程から得られる仕事量が変わらないことを意味します。例えば、車で言えばハイブリッド車のように、少ない燃料でより遠くまで走る車を造るようにするということです。それは資源と費用の節約だけでなく、生活の質までも向上させてくれるのです。考えてみて下さい。現実のものになりつつありますが、資源生産性が向上して、水素だけで走る車が一般化したら、排ガスによる空気汚染も、エンジンの騒音もなくなります。産業は今製品とその製造工程の全てを見直すときに来ているのです。そして、生産性が向上すると、以下の重要な効果が得られます。資源の枯渇を遅らせること、汚染を減少させること、有意義な仕事を創出して全世界の雇用を増やすことの3つです。つまり、資源生産性を向上させる戦略は、生物圏の衰退を食い止め、雇用の増加によって利益を増大させることが出来るので、生態系も保護することが出来、企業などが利益を拡大することも出来るものなのです。
②バイオミミクリ(生物模倣)
私たちの社会は、ゴミで溢れています。ゴミは浪費・ムダの象徴です。2つめの戦略 は、原材料の処理におけるムダを減らす、というよりも廃棄物という概念そのものをなくすことです。これはどういうことでしょうか。自然界を考えてみて下さい。自然界には、ムダというものはありません。食物連鎖で繋がっていますし、また死んだとしても、その死骸すら次の命の栄養になります。つまり、産業システムの仕組みを、閉じたサイクルの中で絶えず原材料が再利用出来るようなプロセスにデザインしなおすということです。現在では、ペットボトル等がこれに近づいているのではないかと思います。原材料は再利用出来ませんが、石油燃料→ペットボトル→フリースなどに利用される化学繊維と、原材料を再利用しています。しかし、そこの循環で新たなペットボトルが生産出来ないとムダがないとは言えませんが。
③サービスとフローに基づく経済への移行
次の戦略は、物質に基づく経済から「サービスとフロー」に基づく経済に移行することです。これはつまり、車に乗りたいと思った時に、車そのものを販売/購入するのではなく、車に乗って目的地まで行くというサービスを提供/利用するということです。そのためには、現在のように家を買う、車を買うといったことが豊かさの尺度とする価値観を転換しなければなりません。しかしこうすることで、製品そのものは企業のようなサービス提供側が永久に所有し続けることになるので、製品はみなより長く使える製品になりますし、新製品販売のためにまだ利用可能なものをスクラップするとか、過剰生産もなくなります。また、ものではなくサービスを購入しているので、景気のいい時に車を買うというのではなく、常に継続して利用することになるので、景気循環も安定するという効果もあるのです。
④自然資本への再投資
最後4つめの戦略は、自然資本ストックを増大させるような再投資によって、地球の破壊へと向かう傾向を逆転させようとすることです。地球全体では人口は増加しているので、現在私たち一人ひとりが利用出来る水、耕作地、魚、天然資源の量は減り続けています。この先将来も人口が増加することを考えると、地球から受けている恩恵の源を維持し、増加させていかなくてはいけないということです。また、このような資源の問題が原因で紛争が起こっている国がたくさんあります。環境への影響を考えることは、世界の平和にも繋がっているのです。