☆宿題の内容☆
課題1
① 経営理念(ビジョン)
一般の銀行と、グラミン銀行(以下GB)の経営理念における決定的な違いは、ビジョンの対象に含まれる人々であると考える。例えば、三井住友銀行のウェブを見ると、“お客さまに、より一層価値あるサービスを提供し、お客さまと共に発展する”(同社Webより)とある。これは、一見GBが行っていることとさほど違いない。しかし、GBにとっての「お客様」と、三井住友銀行にとっての「お客さま」が意味する部分はかなり異なる。GBにとっての顧客は、一般の銀行がこれまでサービスを行わず、既存の社会システムやサービスにのる事が出来なかった人々である。それらの顧客に対して、率先的にサービスを提供するという事を使命においている点において、既存の銀行とGBの経営理念には違いがある。
② 提供している商品・サービス
金融商品において、基本的にマイクロファイナンス団体は融資が主軸のビジネスが多いが、団体によっては、貯蓄、保険、リースも行っており、一般の銀行と比較した際の商品の種類には違いはあまりない。
対象にする顧客の違いから、商品の内容に違いは発生しているものの、顧客のニーズにあった商品を提供しようという点では両組織ともにさほど違いはないと考える。例えば、GBの場合融資額は小額で、一万円以下からお金を借りる事が出来る。その一方で例えば三井住友銀行は、カードローンとして上限が、500万円で、10万円から借りようと思えば、借りられるようだ。http://www.smbc.co.jp/kojin/loan/cardloan/pdf/setumeisyo.pdf
(実際に借りる人がいるのかは知らないが・・・)
利子率の点から見た場合は、むしろマイクロファイナンスの方が高く、消費者金融に近いといえる。例えば、南・東アジア平均では、利子率は36%とされる(S.M.Ahmed 2006)。一方、一般の銀行である三井住友銀行のカードローン利子率は6-12%である(同銀行Webページ参考)。この違いは、マイクロファイナンスの方が、運用コストが高い事が反映された結果といえる。
最後に、金融商品から離れて、そのほかのサービスとして、マイクロファイナンス団体は社会開発要素を含む事業を展開している事が多い。団体によっては職業訓練を行っていたり、融資グループのコミュニティーを利用してそのほかの事業を展開していたりする事がある。例えば、バングラデシュのBRACの場合、ネットワークを利用した、家畜予防接種の事業を展開していたりする。
③その対象
一般の銀行が、富裕層を対象に融資を行うのに対し、マイクロファイナンスは一般の銀行が貸付を行わない層を対象に融資を行う。バングラデシュの場合は、女性が一般の銀行にアクセスが出来ない事が多く、マイクロファイナンスの対象顧客となる事が多い。
④社会への影響
一般銀行、マイクロファンスともに、お金を必要とする人々に、様々なサービスを提供し、生活のサポートをするといった点で社会へプラスの貢献をしている。マイクロファイナンスは、グループローンを用いる事で、コミュニティの活性化につながる場合もあり、一般の銀行が社会へ与える影響+αの付加価値を提供できる。さらに、グラミンの事例からもわかるように、マイクロファイナンスによって、今まで社会から取り残されていた人々を社会に組み込んでいくという点で大きな影響を与えていると考える。
⑤その他
違いとして付け加えたい事は、運営手法だと考える。グループローンという手法を用いている事は、一般の銀行と比較して大きく異なるといえる。
以上をふまえると、一般の銀行と、マイクロファイナンスの違いは、対象とする顧客と、社会への影響にある。対象とする顧客が違うからこそ、商品やその運営方法にも結果的に違いが発生したと考える。また、グラミンバンクの場合理事会のメンバーが顧客であるなど、顧客により多くの社会参加の機会を提供している。
どうしてこのような相違が生まれたのか?
これは、ひとえに創設者の思いではないかと私は考える。目の前の人を自身が専門とする経済学では救えないという思いから行動を起し、貧困解決を行いたいと思ったユヌスの意志がグラミンシステム構築につながり、対象とする顧客、そして社会への影響を強くしていると考える。
【おまけ】
今までの銀行とは異なるインフォーマルな銀行はもともと1970年代から存在していた。そんな中、近年「マイクロファイナンス」が知れ渡った事は、やはりグラミンの功績が強いと考える。では、なぜグラミンの名の下に、マイクロファイナンスが広まったのだろうか?この問いをマイクロファイナンスシンポジウムの際のQ&Aで質問してみた所、下記の3点が上げられた。(以下、私のメモ参照)
1. 顧客からの高い需要が存在していた
2. グラミンの考えた5人組のシステムが画期的だった
3. グラミン銀行/ムハマドユヌスが、広げることに使命感を持っていた
課題2
選んだ商品3つは下記の通りです。
三つに共通して言える事は、新しくこれらの商品が提供される事によって、今までの貧困のサイクルから新しい循環に移転できる事、つまりシステミックチェンジが起こっている点です。
マイクロセービング:
強制にしろ、任意にしろ、お金を将来のために貯蓄しておく事で、突然必要になったときに、高利貸しからお金を借りる必要が無く、貧困の悪循環に陥らずに済む
マイクロクレジット:
お金の融資を受けられる事により、自分でビジネスを行い、貧困悪循環からだっせるor高利貸しからお金を駆りづにすみ、半奴隷的に仕事をせずに済む
リース事業:
顧客である零細企業へ機会をリースする事で生産性を向上でき、零細企業から中小企業へと成長でき貧困の悪循環から脱せる。
課題3
スケールアウトに関して
そもそも、スケールアウトとは、ソーシャルイノベーションを新しいマーケットもしくは地域に広める事であるという(Dees 2002)。この課題では私は、過去四年Fast CompanyからSocial capitalist Awardを授与されているACCIONを取り上げる。1960年ACCIONは、ベネズエラのカラカスにて学生によってボランティアベースで設立された組織である。現在、そのパートナー団体はアメリカ、ラテンアメリカ、そしてアフリカにも広がっている。
Accionのスケールアウト成功の裏には、いくつかの重要なステップ存在する。
要約すると、それは①仕組みの確立②必要な資本集め、③組織の経営強化から構成される。
一つ目のステップはビジネスモデルの確立である。まず、1980年代に、Accionはポートフォリオの質と、組織の運営効率を高める事に成功し、事業収入によって組織を運営できるようになる。
2つ目のステップが、一般の各国の金融機関と、マイクロファイナンス団体(NGO)をつなぐ事である。モデルが構築された後、拡大に必要となるのは資本である。 この資本の調達において、Accionは、アメリカの銀行から信用状を受け取り、これを実績の高いAccionのパートナーNGOに提供する事で、NGOの信用を上げ、地元の金融機関から融資を受けるシステムを作った。アメリカ銀行からの信用状を得る際の補償元本としては、社会投資家から資本を作った。これを、Bridge Fundと読んでいる(Accion International 2006)。
3つ目のステップが、公式なマイクロファイナンス銀行の設立である。1990年になると、地元銀行からの資金でも限界を感じ、Accionは、ボリビアにて、世界初のマイクロファイナンス専門の、法律的に認められた営利銀行BancoSolを設立する。この銀行の優先項目として、NGOを法的に制度化された組織にすることと、MFIに資本を投入できるEquity Fundの設立であった。ちなみにROEは、1998年には28%となっている。Accionが株を持っているメキシコのマイクロファイナンス団体The Banco Compartamosは、2007年4月にIPO(株式公開も達成している。
4つ目のステップが、Equity Fundとしての、Pro Fundの設立である。
そして、最新の取り組みが、マイクロファイナンスの経営支援のために特化した企業 (Private Service Company)の設立である。
参考文献:
坪井 ひろみ (2004) グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援
三井住友銀行WEB ページ http://www.smbc.co.jp/ (2007年10月21日)
Accion Webページ http://www.accion.org/about_our_history.asp(2007年10月21日)
Gregory Dees (2002) Pathway to Social Impact: Strategies for Scaling out Successful Social Innovations
Rhyne, E. (2006) Accion International: Maintaining High Performance through Time
Rhyne, E. & Guimon, A. (2007) The Banco Compartamos Initial Public Offering (InSight No.23)
Syed Mohsin Ahmed (2006) Microfinance in Perspective – An Overview- Pakistan Microfinance Network